1992年、ゴルバチョフ旧ソ連元大統領が広島を訪問した際の演説で、「もう人間は戦争できない」と述べた。その理由は、世界が多くの原子力発電所(原発)を持ちすぎたから。チェルノブイリの災禍を経験した指導者としての実感であろう。
この狭い日本の中に17ヵ所54基の原発がある。その危険は、戦争、大事故、テロや災害の場合に限らない。原料のウラン採掘から日常の定期点検、そして廃棄物の処理に至るまで、常に放射能被害を伴う。今号では、地元に原発や核処理施設を抱えるYWCAの仲間からのメッセージをお届けする。 |
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動き出す再処理工場
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今、私たちの住む青森県の六ヶ所村では、再処理工場が稼働されようとしている。原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出して再利用するための施設である。トラブル続きで遅れに遅れているが、本格的に稼働すれば日常的に大気中に放射能が放出され、事故が起これば猛毒のプルトニウムで汚染される事になる。プルトニウムの半減期[放射能が半分に減るのにかかる期間のこと]は2万4千年と言われる。イギリスやフランスの再処理工場周辺では、子どもの白血病が多発しているという。人類史上最も危険な負の遺産を次世代に残してよいのか、地元にあるYWCAとしては“NO”の声を大にせざるを得ない。
地元ではいつも放射能漏れの危険と隣り合わせることは勿論、このような施設が造られる時、地域住民は賛否両論に分かれ、貧困と保証金の問題も絡んで分裂し、いがみ合い、長く苦しむ。
“原発は温暖化を緩和する”という宣伝は、冷静に検証する必要がある。また、廃棄物の最終処分地が決まっていないことに加え、最終的に稼動を終結する際の安全な停止、跡地の管理など、未知数のことも多い。これらの大きな問題を共に考えていきたいと願っている。
(弘前YWCA会員 宮本富恵) |
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「原発はエコか?」関心を持って! |
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新潟には世界最大の柏崎刈羽原発がある。07年7月16日に中越沖地震の被害を受け、3号機建屋から黒い煙がモクモク出ている映像がテレビに映し出され、恐かった。7号機排気筒からは放射能が3日間漏れ、海へも放射能を含む水が流された。原発設計時の耐震基準をはるかに超えた大きな地震動に襲われ、安全性の議論も残る中、拙速に6・7号機とも営業運転に入っている。
新潟YWCAは地元の反原発の方々と連携を取りながら「いのちとふるさとを守る県民の会」に賛同し活動しているが、目に見えない大きな力(国のエネルギー政策の貧困さ・大企業の経済力・利益効率優先の考え方など)によって住民の安全が脅かされていることを思い知った。「札束で頬をピシャリ」の屈辱は私だけの思いではないだろう。
私たち地球市民の未来に関わることなのだから「原発はエコか?」「被曝することを前提とした労働は人間らしいのか」など、関心を持ち声をあげていきたい。
(新潟YWCA会員 横山由美子) |
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世界で一番危険な浜岡原発 |
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昨年8月11日、駿河湾沿岸を震度6弱の地震が襲った。「ついに来たか東海大地震!」と思った住民も多いはずだ。浜岡原発は巨大地震の予想震源域の真上に位置し、世界一危険!と科学者に指摘されている。今回の自信は予想される東海地震の200分の1の規模だったにもかかわらず、浜岡原発では大地震の想定に匹敵する揺れを記録して、想定の甘さを露呈した。幸い稼動中の原子炉はすべて停止したが、自然からの大いなる警鐘である。にも拘わらず中部電力は、さらに6号機の増設を計画している。
巨大地震発生時にもし原発に大事故が起きたら(これを原発震災という)、放射能は風下である首都圏に達し、チェルノブイリ状態に…。この惨事を防ぐために浜岡原発の稼働停止を求める『原発震災を防ぐ全国署名』はすでに90万筆を集めた。静岡YWCAも呼びかけ団体となり全国のYWCAに協力をお願いしている。2月13日には報道写真家の広河隆一氏を招いて『えっ、まだ原発つくるの?』と題した報告会を開き、強引な原発政策の無謀を訴えた。『環境問題は平和問題です』をテーマに、これからも脱原発、持続可能社会への実践をめざしていきたい。
(静岡YWCA会員 藤原玲子) |
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